コロナ後の地域(岡本義行)

COLUMN コラム

コロナ後の地域(岡本義行)

新型コロナウイルスはワクチン接種で出口は見えかけているようだが、変異しながらまだまだ対応に苦労している。先進国で最初に襲われた国はイタリアである。ヴェネツィアの世界的に有名なカーニバルの祭りの中で急拡大し、カーニバルは途中で中止された。このカーニバルではかなりの人が「カラスのような仮面」を付けている。これは治療にあたった「医者もどき」が被っていたといわれていた仮面だ。カラスのくちばしのような部分には薬草などが入れられていたと言われる。

 その後、感染の中心は北イタリアのベルガモやミラノに移り、感染爆発が起こり、医療体制は崩壊するほどになった。深刻さはテレビのニュースで世界中に発信された。ひっそりとした中心広場の「景色」が印象的であった。

 イタリアでの感染がなぜそのような状況になったのかさまざま語られている。中国との経済関係の強いことで、最初の感染国中国から多くの感染者が入ってきた、財政力の弱さによる医療体制の貧弱さ、ハグなどの挨拶の仕方、中央広場に住民が集中する都市構造などジャーナリズムで指摘された。

 14世紀ヨーロッパで「ペスト風の病」(現在ではペストではなく一種の出血熱と言われている)が大流行したのもヴェネツィアであった。ヨーロッパ全体に広がり、人口が半減してしまった。実はこの病気が最初に侵入したのはジェノヴァであった。ジェノヴァとヴェネツィアは地中海の覇権を争った「強国」であった。地中海は古い時代から一体である。ヴェネツィアには舟で到着した人を隔離する「検疫」島が今でも残っている。そこで40日隔離された(「検疫」Quarantineはイタリア語の40)。ヴェネツィア観光の折に、「検疫島」へは水上バスで簡単に立ち寄れる。

 この病気は中国南部から中央アジアを経てクリミア半島に、そして海路で地中海に入ったと言われる。シルクロードが比較的安全に交通できるようになったのはモンゴルが支配した時代である。「タタールの平和」のお陰である。

 平和によるグローバル化は交易を盛んにして地域に繁栄をもたらした一方、病気も伝播させた。「ペスト風の疫病」は人口を半減させるほど壊滅的な影響を与え、社会を根底から変えた。キリスト教会の権威は傷つき暗黒の中世が終わり、ルネッサンスが到来した。民主主義や産業革命も準備された。

  コロナウイルス は世界をどのように変えるだろうか。14世紀のパンデミックの収束には30年かかったと言われる。COVID-19はいつ終わり、「新しい生活様式」がどのように生まれるのか。既に地方移住は見られるが、テレワークや移住で地方がどのように変わるだろうか。